続々・マイクロノベル

芽生えのしずくの中に、朝露に濡れる麦畑が映る。一滴の麦畑は、どすんと落ちて地中へと吸い込まれていく。一滴の麦畑は、陽が射すと昇華して天へと昇っていく。だが手に取ると、もはやそこに麦畑はなく、芽生えを育てる水へと化ける。

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水栽培で咲いたあとのヒヤシンスを土に植える丘がある。そうすると翌年以降も咲いてくれる。そこは昨年、一昨年、その向こうには十年前、百年前……さらに丘の向こうには、千年前、一万年前のヒヤシンスも咲いているというが、見に行った者は帰ってこない。

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