ある日、道に落ちている「ク」が発見された。その翌日には「ア」、さらに「イ」と「ウ」が見つかった。しかし、その次に見つかったのは「エ」ではなく「ト」であった。「テ」は彼らが戻ってくるのを待ち望んでいた。ぼくらはテイクアウトの看板なのだから。
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花咲く路傍の雑草を、しゃがみ込んで熱心に祈る友人。ヒマラヤ原産の植物らしい。
「どうしたん?」
「ヒメツルソバ様に拝んでる。イエティに襲われないように」
「え??」
気がつくと、回りにも大勢の拝む人たちの姿があった。
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冬になるとハスが語りだすと聞いて蓮田を訪ねた。そして、はっと気づいた。冬枯れたハスの茎が水面に描く蓮文字が、一瞬理解できたのだ。しかし、それはすぐにわからなくなってしまい、枯れた蓮をしばらく眺めていた。
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