またしてマイクロノベル

小望月の夜、十四夜の月待塔の前に集う者たち。団子を月に供えて、念仏を唱える。そう念ずれば、いつかあの月に乗って母星へ還ることができると、ご先祖様は考えていたらしい。蔵には、大きな星図もあったはずだ。
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祖父が大事にしていたロウヤガキの盆栽。てっきり牢屋柿と思ったら、柿の実を鴉にみたてて老鴉柿か。でも、柿の実の中から出してくれと小さな声が聞こえる。祖父が亡くなって、手入れする者もなく枯れてしまった。
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地獄の釜の蓋が咲くという。小さな紫色の花だ。道端で地面に張りつくように葉を広げるキランソウという草の姿を蓋に見立てた別名らしい。地獄の釜の蓋は茎を伸ばして増えていき、その分地下にも地獄が広がっていく。
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あんたが来るのに、何もないのもなんだと思ってね。樹の模型の影を何本か、スクリーンに写してみたんだ。どうだい、いい感じだろ。え、スクリーンの向こう? 見ないほうがいいよ、やっぱり何もないんだからさ。
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